年度末の空港は、
行き交う人々の声色にも、
春らしさを感じる。
チェックインを終えた1人の若いお客様が、
リュックを背負い、右手で大きなキャリーケースをひいて、
手荷物カウンターへやってきた。
私は、キャリーケースを受け取り、
はかりに載せる。
20kgを超えないか、
少し不安そうに見つめる、お客様。
18.4kgの表示を確認して、
そっと胸をなでおろしたその顔は、
昨日の荷造りの苦労を物語っているようだった。
そんな想いを抱きながら、
身軽になったお客様の後ろ姿を、
私は笑顔で見送った。
REASON 01
年度末の空港は、
行き交う人々の声色にも、
春らしさを感じる。
チェックインを終えた1人の若いお客様が、
リュックを背負い、右手で大きなキャリーケースをひいて、
手荷物カウンターへやってきた。
私は、キャリーケースを受け取り、
はかりに載せる。
20kgを超えないか、
少し不安そうに見つめる、お客様。
18.4kgの表示を確認して、
そっと胸をなでおろしたその顔は、
昨日の荷造りの苦労を物語っているようだった。
そんな想いを抱きながら、
身軽になったお客様の後ろ姿を、
私は笑顔で見送った。
REASON 02
航空機整備士として、
この空港で働き始めて、
もう少しで3年が経つ。
1機1機、特徴の異なる航空機に、
向き合う日々を送る。
搭乗されるお客様とお話しする機会は、
ほとんどないが、
一人ひとりのお客様の空の安全を支える、
という想いを胸に、今日も仕事に取り組む。
先ほど整備を担当した航空機が、
搭乗を終え、滑走路へと向かう。
若いお客様が、
窓からこちらをのぞき、
手を振っているのが見えた。
私はいつもより、少し大きく手を振った。
REASON 03
離陸後しばらくして、
シートベルト着用サインが消え、
サービスの準備に取り掛かる。
飲み物をお客様にお持ちする。
窓側に座る1人の若いお客様は、
リュックから取り出した
小さなお弁当を見つめながら、
目にうっすら涙を浮かべていた。
この便は、東京・羽田行き。
地元を離れ、
来月から社会人として働くために、
上京するのだろうか。
心のなかで、
「がんばれっ。」と想いながら、
私は、飲み物を手渡した。
REASON 04
運航乗務員になって、
いくつものフライトを担当してきたが、
ひとつとして同じフライトなどない。
天候や時間など、
要素はさまざまあるが、
なにより、ご搭乗いただくお客様は毎回異なる。
どんな理由で、乗ってくださったのだろうか。
お仕事だろうか。ご旅行だろうか。
この時期だと、上京されるお客様も
いることだろう。
同じ機体に乗ってはいるけれど、
お客様の数だけ、空は存在するのだ。
安全のバトンを受け取った私は、
最終ランナーとして、
177名それぞれの1時間35分を想い、寄り添う。
-15:20
手元の時計は、定刻を示した。